2017年1月|福祉新聞編集部
認知症の人が引き起こした事故やトラブルの損害に対し、公的な補償制度で対応することを見送ることが、13日の「認知症高齢者等にやさしい地域づくりに係る関係省庁連絡会議」で確認された。どの範囲まで救済するのか、財源はどうするのかなど幅広い議論が必要であり、まずは現在取り組んでいる地域の見守り体制づくりを推進することで対応する。民間で認知症リスクに備える保険の販売が相次いでいることも見送る理由に挙げた。
連絡会議は認知症の人による事故の責任の在り方をめぐり、今年3月のJR死亡事故訴訟の最高裁判決を受けて検討を始めた。最高裁は家族に賠償責任はないとしたが、1審判決では家族に720万円の損害賠償を命じていた。
国土交通省によれば認知症の人が関係する鉄道事故は14年度に29件、最大損害額は約120万円。警察庁からは15年に認知症の人(事故後に判明)が交通事故で車の免許取り消しなどになったのは78件との報告があった。
そうした実態から、損害が高額な事案が頻繁に多発しているわけではないなどとして、まずは事故やトラブルの未然防止や早期対応の施策を推進していく。具体的には認知症サポーターの活用、運転免許センターに医療系専門職員を配置、鉄道駅の設備の整備推進などを挙げた。今後については状況を注視しながら必要に応じて検討するとした。
連絡会議は非公開で配布資料や議事要旨は後日、厚労省のウェブサイトに掲載される。
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